邪恋 (新潮文庫)
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商品の詳細
- Amazon.co.jp ランキング: #458200 / 本
- 発売日: 2004-10
- 版型: 文庫
- 687 ページ
エディターレビュー
内容(「BOOK」データベースより)
義肢装具士の笹森は友人の医師・智久の依頼を受け、下肢を失った美弥子の義足を製作する。自殺未遂か、事故か、下肢切断の理由を語らず、義足をつけることも頑なに拒む美弥子。静かな諦念に彩られたその風情に笹森は惹かれてゆくが、そんな彼には秘密の愛人がおり、美弥子にもまた…。情愛が炙り出す孤独と不安、性愛が喚び覚ます熱と冷気。大人の恋の本質を描き尽くした長編ロマン。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
藤田 宜永
1950(昭和25)年、福井市生れ。早大中退後、渡仏。エール・フランス勤務、帰国後のフランス語教師などを経て、エッセイを書きはじめる。’86年『野望のラビリンス』で小説デビュー。’95(平成7)年、『鋼鉄の騎士』で日本推理作家協会賞、日本冒険小説協会特別賞受賞。’97年の『樹下の想い』で恋愛小説にも新境地を開き、2001年『愛の領分』で直木賞を受賞した(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
カスタマーレビュー
家庭・愛人・そして新しい愛する人
著者の精神的な結びつきを大切にする静かに描く「大人の恋」が好きだったけど
この作品では肉欲的な結びつきな色が濃く描かれている。
ストーリーとしては、家庭を持ちつつ愛人宅に常に通い、その愛人の結婚を機に
新たな愛する女性と結ばれ、やがて全てを失うというもの。
この作品では主人公の職業が重要なものとなっている。
体の一部を失った患者に人口の義足や義手を作り、元の生活に復帰させること。
だけど、どんな精巧なものを作っても、失われた体が戻ってくることはないし
それは人口で作ったパーツに「慣れる」ということにしか過ぎないということ。
これを、男と女に置き換えて描いたんだと思えてくる。
主人公は、これまで関係を持った女性は、自分の心の満たされない部分を補う
もの、としてきたけど、やがてぜったいに壊れることがないと信じていた妻
にも去られ、愛人達も全て失い、自分自身こそが、愛した女性達の心のすきま
を埋めてきた単なるパーツにしか過ぎなかったんだと自覚する。
そのとき、これまではどんな状況下でも「人生をついでに生きてきた」と自負
する主人公の心に人生の冷たい木枯らしが吹き抜けたのだと思う。
どこにでもありそうな不倫のお話し
義肢装具士という、特殊な職業を生業とする主人公。彼を取り巻く女たち。ですが、物語の中身は非常に平凡で、平気な顔で不倫に走る人々が次々登場し、それがばれたのばれないのと、アリバイ作りに奔走する姿が随所に描かれます。藤田氏の作品の中でも、非常に官能色が濃い作品です。
本気で人を愛するということ、家庭を持つということ、本来大切にすべきものを全く省みずに女性を性の対象としか見ていないない主人公に、どうしても共感できませんでした。そんな彼とつながりを持つ女性たちも、女としてのしたたかさが明らかで、好きになれません。「人間なんて本来こんなものなんだよ」というのが、作者のメッセージだとしたら、悲しすぎます。もっと、人間の奥深くが描けると思っている藤田氏だけに、この作品は残念でした。
愛に溺れないから「邪」なのか。
奥さんも子供もいながら、若い女性(親友の妹)と不倫関係を結んでいる主人公の笹森。
どこか恋愛にかんして冷めている、そして生きることについても冷めている。
「ついでに生きている」という笹森を評するキーワードは、特別なことではないように感じます。
自分が傷つきたくない。
だから冷めているようにしているんじゃないのかな。
精神的にも肉体的にも惹かれた人妻、美弥子に別れを告げられた時も
別れを告げられて寂しくないわけではない、
けれど心に壁をつくっていると、相手からも壁を作られる。
傷つかないわけではないけれど、その傷は浅い。自己防御ですよね。
けれど意識せずにしていた自己防御のために笹森が恋人たちにしてきたことを、
美弥子から告げられた言葉によって突き付けられます。
「冷めている」ことで、どれだけ相手を傷つけるかを。
夢のような溺れるような愛に、人は溺れきれないようになっているように思います。
それは現実の生活があるから。
現実にもどれなくなったとき、人は人として生きることに破綻するのでしょう。




