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死に急ぐ鯨たち (新潮文庫)

死に急ぐ鯨たち (新潮文庫)
By 安部 公房

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  • Amazon.co.jp ランキング: #343916 / 本
  • 発売日: 1991-01
  • 版型: 文庫
  • 238 ページ

エディターレビュー

内容(「BOOK」データベースより)
いつ崩れるかほからない、危うい均衡の上に成り立つ現代世界。破局が来るその日まで、我々は引き延ばされた日常に居座り続けるつもりなのか?文学の最先端を疾走し続けてきた作家が、国家、科学、芸術、言語、儀式などを縦横に論じてゆく中で、時代を解く鍵が鮮やかに浮かび上がる…。論文、エッセイ、インタビュー、写真など多様な表現で、危機的現代を明快に摘出する評論集。


カスタマーレビュー

★知的好奇心を刺激される本です★5
晩年、メディアへの露出も減少し、文壇とも距離をおいていた安部公房が何を考えていていたかを知ることのできる貴重な資料と思われます。話題は多岐にわたっていて、好奇心を刺激されます。私個人的には、角野忠信氏の「日本人の脳」についてふれているインタビューや、エッセイがお気に入り。「無国籍作家」と呼ばれた安部公房の、一筋縄ではいかない物の見方が非常に面白いですよ!

ポストコロニアル文学者の思想的エッセンス5
安部公房は日本語文学が誇るポストコロニアル文学の巨星である。1986年
に出版された、この安部公房のエッセイを読んでみると、ポストコロニア
ル理論のエッセンスが、彼独自の言葉によってほとんど語られていたこと
がわかる。植民地主義、ナショナリズム、アイデンティティー、ハイブリ
ッド、「ロビンソン・クルーソー」、ガルシア・マルケス、カネッティ、
無国籍文学等々。たとえば次の一節を見てみよう。

東は東、西は西。(中略)と、僕が西欧人なら言うだろうね。
もちろん好意的意見としてだよ。日本人がまたそれに乗って、
東は東なんて言いだしたら、まんまと向こうの思うつぼですよ。
東も西もないんだって、なぜ日本人が言えないんだ。(中略)
今東洋という括弧で何かをくくった瞬間、何が起きるかとい
ったら、結局植民地主義者と植民地原住民との色分けだけでし
ょう。(91-92頁)

まさに、安部公房流の脱アイデンティティ論であり、脱オリエンタリズムで
はないか。まさに必読の書である。

9.11以後:予感の実現5
もうかなり前に書かれた本書で、安部公房は、次のように述べている。

「… 誰かが生き延びるために、誰かが死ぬ、この条件がある限り、サバイバルは犯罪になってしまう…人間が人間を所有し支配できるかぎり、生き延びようとすることで誰かを殺してしまうんだ…ファシズムとはすなわち選別の思想なんだ…殺すことも、殺されることも拒否しようと思えば、二人とも死ぬしかない…いまわれわれが置かれた状況は、まさにその選択を迫っているとぼくは思う。どっちかが生き延びることをゆるされるのなら、核戦争も許されてしまうじゃないか」 (p.104-108.)

 これは決して、「冷戦時代の思考」ではなかったことが、9.11とイラク戦争後、やっと明らかになり始めている。「核戦争も許されてしまう」という鮮明な予感は、今まさに現実のものとなった。核は今や、「偏在する潜在的なものとなった敵」の裏をかくことさえ可能なものとして、それ自身が「偏在する潜在的な力」となった。それは、多様な戦術に応じて、いついかなるときにも、誰に対しても使用され得るものなのだ。
 このような状況において、本書だけが語ってくれることは何だろうか。