張込み (新潮文庫―傑作短篇集)
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商品の詳細
- Amazon.co.jp ランキング: #31164 / 本
- 発売日: 1965-12
- 版型: 文庫
- 451 ページ
カスタマーレビュー
目からうろこの推理世界
つい先ほどテレビドラマ化された松本清張「張り込み」読みました。短編集で他にも同じく前にテレビドラマで見たことのある「一年半待て」も収録されていましたが、どれも圧倒されるような短編とはいえ清張氏の世界がぐんぐん目まぐるしく広がっているような気がして、総じて結構ボリュームがあったのですが、そう量を大きなと感じることなく、あっという間に読むことができました。どれも人づてに聞いたかテレビドラマで内容をほぼ知っているとはいえ、それでも飽きることなく其々にやはりかかれた時代が今と感覚が違っているところはありますがそれでもぐんぐん進んでいくその世界に目が話せませんでした。推理小説といえば江戸川乱歩ぐらいしか知らなかった私には「顔」とか「声」とかこんな推理小説もあったのかと感心するばかりでした。それと書かれているその知識の膨大さには圧倒されそうでした。「投影」なんて何かもうただ読んでいるだけであちこちの推理が右往左往してただその推理は何となく分かったもののほんとに頭が混乱しそうでした。「カルネアデスの舟板」今一わかりにくい学者の世界でありながらそこに愛憎が入り乱れほんとにあんな風に終わってしまうとは思いませんでした。テレビドラマで大体分かっているとはいえ「一年半待て」原作小説はこんな風になっているのかと感心し、テレビドラマで放映されていたのと連想しながら余計に楽しめたような気がしました。表題作「張り込み」は人伝に内容を聞き知っておりましたが同じくテレビドラマと連想させて余計に楽しみ、原作小説との微妙な違いが更に読む楽しみを増加させるような気がして、面白く読むことができました。テレビドラマと関連させて更にこんな推理小説もあるのかと感心され、やや時代感覚の違いはあるものの、それでも充分楽しめることができました。遥かに圧倒そうであり、清張氏の世界にはまっていきそうです。
傑作推理短篇
ある女性の人生の一断面を活写した「張込み」。余韻嫋々たる傑作です。刑事が一人で張込みをするはずがないとこの作品の「ミス」をあげつらう人がいますが(それはその通りなのだが)、これは僅かな瑕疵というものであって、張込みをする刑事はこの作品の場合一人でなければならない状況設定なのです。むしろ、その設定を生かして人生の断面を見事に描いた手腕を評価すべきです。
その他にも「顔」、「一年半待て」、「地方紙を買う女」、清張の初期作品としては珍しく読後感の明るい「投影」が収録されています。
昨今の水増しされた推理小説とは段違いの、中味の濃い作品集です。
なお、カバーが下品であるのには文句は言いたいところです。旧版の抽象画の方がよかったと思います。
清張の芸の旨味を堪能することができる八つの短編
松本清張初期の短編が八つ、収められています。表題作の「張込み」から順に、「顔」「声」「地方紙を買う女」「鬼畜」「一年半待て」「投影」「カルネアデスの舟板」。
とりわけ印象に残ったのは、「鬼畜」と「投影」の二作品。陰と陽とでもいった味わいが好対照なんですが、作品の根っこの部分で通じているところがあるかなあと、そんな気がします。「鬼畜」に出てくる三人の子供の長男と、「投影」に出てくる主人公の男。虐げられた者が鬱々として、「今に見てろよ」と怨念を抱くところ、そこに“復讐する者”が持つ共通した匂いを感じました。といっても、両者ともはっきりと形を取って復讐する訳ではありません。しかし、彼らが心に抱えた暗い気持ち、恨む気持ちに通じるものを感じたのです。「鬼畜」はもう、どうしようもなく暗い思いにとらわれました。血のつながっていない三人の子供を目の前から消し去ろうとする夫婦の話、それが「鬼畜」です。黒い汚点のように心にしみついて離れない、そんなやりきれない話ですが、これが読後、じわじわと効いてくるんですよ。ぞおっとします。
さらに、“一緒に見なされないものを一緒に結びつけて考える”というところにミステリのひとつの面白味があるのですが、この妙味を出す手際の巧さ、それが清張作品にはあるのですね。「地方紙を買う女」では、主人公の作家が読者からの葉書を読んで、それをあることと結びつけて考える件りがあります。一見なんのつながりもなさそうに見えたところに、ある関連性が浮かび上がってくるんですね。離れた点と点を結んで、ひとつの絵に仕立ててしまう面白さ。そこに清張の芸の旨味を思うのです。





