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氷壁 (新潮文庫)

氷壁 (新潮文庫)
By 井上 靖

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  • 発売日: 1963-11
  • 版型: 文庫
  • 633 ページ

エディターレビュー

内容(「BOOK」データベースより)
奥穂高の難所に挑んだ小坂乙彦は、切れる筈のないザイルが切れて墜死する。小坂と同行し、遭難の真因をつきとめようとする魚津恭太は、自殺説も含め数々の臆測と戦いながら、小坂の恋人であった美貌の人妻八代美那子への思慕を胸に、死の単独行を開始する…。完璧な構成のもとに雄大な自然と都会の雑踏を照応させつつ、恋愛と男同士の友情をドラマチックに展開させた長編小説。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
井上 靖
1907‐1991。旭川市生れ。京都大学文学部哲学科卒業後、毎日新聞社に入社。戦後になって多くの小説を手掛け、1949(昭和24)年「闘牛」で芥川賞を受賞。’51年に退社して以降は、次々と名作を産み出す。「天平の甍」での芸術選奨(’57年)、「おろしや国酔夢譚」での日本文学大賞(’69年)、「孔子」での野間文芸賞(’89年)など受賞作多数。’76年文化勲章を受章した(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)


カスタマーレビュー

ドラマティック!5
読んだ後に大きな爽快感を感じられる1冊です。
特に、男気に富んだ、実直な主人公の最後の登山シーンは大変ドラマティックで、また、彼の残した手記は読むものに感動を与えると同時にその山の情景に吸い込まれていきます。
全体的にストーリーがじわじわと進んで行くため、最終シーンでは一気に興奮と感動が押し寄せます。

山に少しでも携わる人はもちろんのこと、そうでない人も十二分に楽しめる素晴らしい本だと思います。

ドラマになってなければ読まなかった作品5
久しぶりに美しい日本語を読んだ気がします。井上靖というと、わたしの中では『しろばんば』『敦煌』というイメージしかなかったので、この内容は意外でした。かおるの描写の美しいことといったらありません。対する美那子の若さを抑えようと苦労している中にもにじみ出てくる怪しさが女豹という言葉で表されていたり(これは現代としてはちょっと古いかな)、海面がぶさぶさと波立つなどとおもしろい表現も。

読み終わったあとに、これが昭和32年に出版されたものだと知って驚きました。確かに妻を呼ぶときにに手をたたいて呼ぶなんて、古風な描写もありますが、そんなことは気にならず人物は生き生きとしています。
何十年も前に出版された小説を読む気にさせたのは、TVドラマ化されたのを知ったからです。
ドラマ自体は見ていませんが、この小説だけでなく、原作に触れる機会を作ってくれるドラマ化は、わたしにとってはありがたいです。

山と井上靖の文章の魅力5
 淡々とした物語の進行がいい。山から下りてくると、人と話をしたくなる。そして、都市生活の雑多な毎日に飽きてくる(或いは疲れてくる)と、また山へ行きたくなる。主人公は登山家とはいえ、スポンサーがついているわけではない。金を工面する為に給料を前借りし、登山の時間をつくるために周囲を気にしながらも休日取得を会社に申告する。そこには一人のサラリーマンの姿がある。難関ルートを一緒に踏破しようとしていた友人は、山を下りてみれば、女性に翻弄されている普通の男の面をもっていた。更に、登山用品としてのザイル、一癖ありながらも理解のある上司、実験結果重視の技術者など物語はいくつかのポイントを織り交ぜながら進み、最後はまた山へ。
 読んでいる途中で何度も行きたいと思った。穂高へ、新宿駅へ。静かにそんな気持ちにさせてくれる一冊。