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女神 (新潮文庫)

女神 (新潮文庫)
By 三島 由紀夫

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  • 発売日: 1978-03
  • 版型: 文庫
  • 346 ページ

カスタマーレビュー

自然と意志5
完全な美しさを求め続けても、決してそれは固定されることはない。時の流れ、即ち老いによって美しさはどうしても崩れてゆくからである。逆に言えば美しさを求めることは不可逆的時間の流れる「自然」に対抗する人間の「意志」であり、女性の化粧やダイエット、若作りはその表れに他ならない。しかし、悲しいことに美しかろうとする「意志」と老いていく「肉体」の齟齬が発生してしまう。それを理解したとき、依子がその心情を吐露している場面が非常に切ない色を帯びてくる。

どんなに飾ったところで本当の恋に目覚めた女の美しさには勝らない。その美しさを見て嫉妬を覚えるのは父親の宿命であって仕方ないけれども、恋を憚らない、揺ぎない「意志」を持った娘が、またそれ以上に美しいことに驚かされる。これをありのままの、「自然」な美しさに対し、人間の「意志」による美しさの勝利とするのは容易であるが、その両者の緊張状態の中に、一つの美しさがあると考えることができそうである。

『女神』の他、10編の短編がある。恋の、またそれをフィクション化する繊細な描写や、作者にとってあまり類を見ない幻想的なものもあって興味深く、どれも読み応えのある作品ばかりである。

参考にもなる本5
三島由紀夫の描く、憂いのある優美な世界が好きな私。
その点で、この女神も申し分ないです。
何年か前に読んだ本ですが、今でもお気に入りです。

内容については、書かれている方の通りです。
周吾は、妻依子の美貌を失うが娘朝子を上品で美しい娘に育て上げる。

私が、おもしろく感じたのはその周吾の教育です。
例えば、その日着ている洋服の色に合ったお酒を選ぶこと。とか、
それを当たり前と実践なさっている方もいるでしょうが、
私には、こういう所に気がつく女性って素敵だなぁ・・・と、参考になる点もちらほら。
お年を召した素敵な女性から昔話を聞いているような・・・
私の中ではそんな一冊です。

クラシカルな感覚、雰囲気がお好きな方には、おすすめです。

女神4
周吾は何よりも「女性の美」というものを崇拝していた。 彼の妻、依子はまことに造化の妙を嘆ぜしめる美人であった。永い海外生活のあいだ、このおしどり夫婦は彼の属する商事会社の誇りでもあり、ひろくは日本の誇りでもあった。その彼女の美しさをこの上なく褒め尽くしていたのは周吾自身であった。

戦争のさなか、妻依子はその美貌を事故で失うことになる。「美」を崇拝していた周吾は「くずれた美」などにはもはや目もくれないようになる。気が付くと、娘の朝子は母の美貌を受け継ぎ、美しい娘へと成長を遂げていた。 一度は崩れた自分の夢が、この娘に託されていくことになる。

依子は事故以来、自分の人生を台無しにしたのは他でもない、「女性は美しくあるべきだ」という思想を刷り込ませた周吾のせいにした。周吾の並外れた娘に対する愛を傍らで嘲笑しながら・・・。