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盗賊 (新潮文庫)

盗賊 (新潮文庫)
By 三島 由紀夫

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  • 発売日: 1954-04
  • 版型: 文庫
  • 214 ページ

エディターレビュー

内容(「BOOK」データベースより)
子爵家の一人息子藤村明秀は母の旧友の娘に恋をするが、したたかな相手に翻弄されるだけに終る。やがて、傷心のあまり死を決意した彼の前に、男爵家の令嬢山内清子が現われる。彼女もまた恋に破れ、自殺を考えていた。二人は互いの胸の中の幻影を育てあうという“共謀”を始める…。死の想いによって引き寄せられた一組の男女を中心にくり広げられる精緻微妙な愛のアラベスク。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
三島 由紀夫
1925‐1970。東京生れ。本名、平岡公威。’47(昭和22)年東大法学部を卒業後、大蔵省に勤務するも9ヶ月で退職、執筆生活に入る。’49年、最初の書き下ろし長編『仮面の告白』を刊行、作家としての地位を確立。主な著書に、’54年『潮騒』(新潮社文学賞)、’56年『金閣寺』(読売文学賞)、’65年『サド侯爵夫人』(芸術祭賞)等。’70年11月25日、『豊饒の海』第四巻「天人五衰」の最終回原稿を書き上げた後、自衛隊市ヶ谷駐屯地で自決。ミシマ文学は諸外国語に翻訳され、全世界で愛読される(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)


カスタマーレビュー

エレガント5
私は、三島の小説の中で何が一等好きかと問われれば、この『盗賊』を挙げるかも知れない。人間心理の裏の裏までを描出しているのにも拘らず、格調高き文体によって完璧な技巧的世界を作り出し、その中で外見上は坦々と、然し内面的には轟々と、主人公が生き、そして死に至る様を描く……その手法はエレガントとしか言いようがなく、流石、鬼才、三島という感じを受けた。

ぬくぬくと生きる苦しみからの解放5
死を決心したときに、初めて生を実感できるという作者の考えは『葉隠入門』で書き表されているが、本書はその思想が根本としてある。生きるものはすべて死に向かっているが、我々は普段それを意識せずに生活する。と言うより、生活そのものが死に向かっていることを隠す。そのため、我々は生きているだけでは生を実感できない。恋に破れた明秀と清子は死を直視したとき、こうしてぬくぬくと生きながら死を待たなければならないという苦しさを感じたに違いない。もっとも、両者がどのような思考の経路を辿って死の決心に行き着いたかは異なるかもしれない。本書で詳しく描かれているのは明秀についてのそれのみだからである。

一方、話が進行していく中で、明秀に対する藤村子爵・夫人の位置関係が変化していくことが、本書を重層的にしていると思われる。夫人に対して持つ子爵の疑惑は、明秀の描いた失恋の疑惑と異なっているようで実は同じ感情機構のように見える。なぜなら子爵も明秀と同様に、自分の感情を秘密にしていると考えられるからだ。

作者の若い頃に書かれた作品だけにアフォリズムが目立っている。そのため少しうるさく感じてしまう部分もあるが、繊細な内面描写と、最後の一文のために計算し尽くされた構成の巧みさはその頃から健在であり、作品を奥深いものとしている。

はまった本5
 私が三島由紀夫にはまったきっかけの本。とある雑誌で、女性パンクロッカーが、好きな本ということで紹介していて興味を持った。
 
 内容はつまらない心中ものであるが、その表現の言葉の豊富さに圧倒された。そしてこの小説は最後が素晴らしい。この最後を読みたいがために私は何度もこの本を手に取った。まさに、終わりよければすべてよし、だ。

 前半の美しいが退屈な文章に耐えたあとに最後の一文を読むと恍惚としてしまう、そんな小説である。