きりぎりす (新潮文庫)
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商品の詳細
- Amazon.co.jp ランキング: #89499 / 本
- 発売日: 1974-09
- 版型: 文庫
- 366 ページ
エディターレビュー
内容(「BOOK」データベースより)
「おわかれ致します。あなたは、嘘ばかりついていました。…」名声を得ることで破局を迎えた画家夫婦の内面を、妻の告白を通して印象深く描いた表題作など、著者の最も得意とする女性の告白体小説『燈篭』『千代女』。著者の文学観、時代への洞察がうかがわれる随想的作品『鴎』『善蔵を思う』『風の便り』。他に本格的ロマンの『水仙』『日の出前』など、中期の作品から秀作14編を収録。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
太宰 治
1909‐1948。青森県金木村生れ。本名は津島修治。東大仏文科中退。在学中、非合法運動に関係するが、脱落。酒場の女性と鎌倉の小動崎で心中をはかり、ひとり助かる。1935(昭和10)年、「逆行」が第1回芥川賞の次席となり、翌年、第一創作集『晩年』を刊行。この頃、パビナール中毒に悩む。’39年、井伏鱒二の世話で石原美知子と結婚、平静をえて「富嶽百景」など多くの佳作を書く。戦後、『斜陽』などで流行作家となるが、『人間失格』を残し山崎富栄と玉川上水で入水自殺(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
カスタマーレビュー
読みやすくてアトラクティヴ。
太宰の有名な作品「人間失格」「斜陽」「ヴィヨンの妻」「走れメロス」などにはない、ひとりがたりの魅力にあふれた短編集です。
題の、きりぎりすが一切出てこない「きりぎりす」も、女のひとりがたりが巧みです。内容はいわゆる「夕鶴(鶴の恩返し)」に近いものがありますが、主人公の女性は鶴ではありませんし、しっかりとした感情を持っています。そんなシミュレーションのようにも思われるのでした。
女性のひとりがたりの「燈籠」「皮膚と心」「千代女」はどれも傑作である。自分の内面の醜さを知っている、あるいは環境の醜さを知っているという、そんな女性の主人公をして語らしむるところに効果があります。
それ以外にも嫌いな犬に愛着を抱いてしまう「畜犬談」、愚かなおしゃれとそれを好んでしまうことを自白する「おしゃれ童子」なども素晴らしく引き付ける力があります。
また、「おしゃれ童子」もそうですが、私小説的な独白の「鴎」や「佐渡」、そしてその匂いをうかがわせる「姥捨」などは、太宰治の人物像を知るに適していますが、「善蔵を思う」はそれをさらに明確にしていてわかりやすいかもしれません。
太宰の作品は「哀しい笑い」が多いです。でも、なぜかカタルシスを得ることができます。その傾向としては「水仙」を推薦させて頂きます。
とにかくこの一冊は、ある程度つながっているような作品もありますが、バラエティに富んでいて、楽しめる(語弊がありますが)ものとなっています。
せつないせつない廻り灯籠の様な短編集
~表題作を含む14編からなる短編集であります。本書の中で、いや太宰作品の中で私が最も好きな作品が、冒頭に収録された「燈籠」です。せつないせつない物語です。不粋ですから詳しく書けませんが、ある事件を起こし、後ろ指をさされながらも健気に生きる女の物語です。その事件の動機がまたセツナイです。太宰治の作品の中には「斜陽」のように女性の視点から物~~語られる作品がありますが、それも女性心理に精通した太宰ならではの才能かもしれません。
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私は太宰治を敬愛するあまりに、彼が愛した武蔵野に住んでおりますが、たそがれ時など、ひょっとして太宰の亡霊やこの掌編の主人公とすれ違うのではないか、と、ふと感じる事があります。なぜならばこれらの作品はこの町を舞台に描かれているからです。太宰が入水自殺した玉川上水は、当時のニュース映像と比べて観ると今では水嵩も低く流れも無く、とてもこ~~こで人が亡くなったとは思えません。太宰が住居跡の庭を掘り起こすと埋められた注射器の破片が出てくるそうですが薬物中毒や女性問題、入水自殺の最後ゆえにセンセーショナルな面ばかりが取沙汰される作家ですが、あの唯一無二の文体の魔術は「文豪」と呼ぶにふさわしいでしょう。太宰は繊細で弱い男ゆえに哀しみが解る作家でした。それを「燈籠」をはじめこ~~の短編集は証明しています。「人間失格」や「斜陽」ばかりでなく、こうした短編・掌編では、等身大の太宰のやさしさや哀しみに触れられることでしょう。太宰が借りていた仕事部屋も取り壊され大きなマンションが建ち、この町もすっかり変わりました。仕事後には飲み屋で一杯引っ掛けていた三鷹駅周辺も、当時の面影を探すのは困難です。しかし私の様な太宰フ~~ァンは、あの粋な着流し姿でほろ酔い加減の太宰がいまだ彷徨う姿を見掛けてしまいます。~
太宰の本の中でも究極のおすすめ作品、★10個
太宰はついに切望した芥川賞など大きな賞は獲れませんでしたが、
確実に後世に残る作家だと確信しています。そのきらめきは、
21世紀を迎えた現在、いっそう輝きを増していると感じられます。
決して青年のためだけの作家ではありません。
ある種の普遍的な情緒と感情の断面を、永遠に輝く結晶になしえた、
希有な作家です。確かに技術的には欠点も多い作家ですが、それが
なんだというのでしょうか、それぐらい魂をゆさぶる何かがあります。
特にこの「きりぎりす」収録の、「燈籠」「黄金風景」は、太宰文学の
良いところが最大限に、そしてストイックに、それゆえもっとも美しく
結晶化された最高の高みに達している大傑作のひとつだと思います。
過去の人生において50回読んでも60回読んでも感動できる作品です。
多くの人におすすめします。すべての人が感動するとは思いませんが
必ず一生ものの作品と出会えたと感じる方も存在するであろう、そんな
名作です。
「畜犬談」なども、笑わせようという意図が鼻につく、やや冗長な作品ですが
それでも太宰のサービス精神とやさしいまなざしが胸を打ちます。
買って損のない文庫です。





