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風の影〈下〉 (集英社文庫)

風の影〈下〉 (集英社文庫)
By カルロス・ルイス サフォン

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  • 発売日: 2006-07
  • 版型: 文庫
  • 427 ページ

エディターレビュー

出版社/著者からの内容紹介
読み出したら止まらない壮大な物語。
ダニエルは『風の影』の作者の謎を追ううちに、内戦に傷ついたバルセロナの秘密の迷宮に入り込み、憎悪、情熱、呪い、狂気、因縁、恋愛等、様々な体験を重ね、作家の過去と彼の未来が交差していく。

内容(「BOOK」データベースより)
謎の作家フリアン・カラックスの過去が明らかになるにつれて、ダニエルの身に危険が迫る。一方、彼は作家の生涯と自分の現在との不思議な照応に気づいていくのだが…。ガウディ、ミロ、ダリなど幾多の天才児たちを産んだカタルーニャの首都バルセロナの魂の奥深くを巡る冒険の行方には、思いがけない結末が待っている。文学と読書愛好家への熱いオマージュを捧げる本格ミステリーロマン。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
サフォン,カルロス・ルイス
1964年、スペインのバルセロナ生まれ、ロサンゼルス在住。執筆活動のほか、フリーランスの脚本家としても活躍。1993年のデビュー作『霧の王子(El Principe de la Niebla)』で、エデベ賞を受賞。5作目の『風の影』でフェルナンド・ララ小説賞準賞(2001年)、リブレテール賞(2002年)、バングアルディア紙読者賞(2002年)を受賞

木村 裕美
東京生まれ。上智大学外国語学部イスパニア語学科卒。翻訳家、マドリード在住(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)


カスタマーレビュー

緩やかな悲劇5
上巻では、主人公ダニエルの恋やフリアンの過去、フリアンの本を燃やす「悪魔」ライン・クーベルトとの対峙などが、まだベールに包まれたあやふやな形で描かれていましたが、下巻に入ると、ダニエルと元ホームレスの友人フェルミンの探偵活動が活発になっていきます。
フリアンの恋が始まったと同時に、緩やかに悲劇が始まっていたことがわかっていきますが、親友ミケルがそれに対して心を砕いたことも感じられます。フリアンとミケルの友情、ミケルのやさしさが行間にあふれ、思わず涙してしまいました。
読み進める間、ずっと、「フリアンは生きているの?」「これからダニエルはどうなるの?」という気持ちが胸を占め、本を手放せませんでした。
上巻、下巻を通して、登場人物の息吹、感情が満ちているのもこの物語の魅力です。中でもフェルミンの存在は大きい。ダニエルと物語を、そして読者を回転のいい頭と口で導いていってくれます。

父と息子の物語5
今、読了しました。書店にあふれる書物から、この一冊を選び取った瞬間に、そこは「忘れられた本の墓場」となり、あなたはダニエルになります。
生き生きとした登場人物と、巧緻なプロット。物語や書物、万年筆などの文具を愛してやまない人にこそ、この本を読んでいただきたいと思います。
また、満ちあふれる警句や、あたかも詩歌のような美しい修辞にも心を奪われます。
そしてなにより、この物語の核は、父と息子の物語であると思います。大切なものが父から息子に継承されることの美しさが、何よりも心を打ちます。
本を読む喜びに浸ることができる、文字通りの傑作です。

人生とは他者に読まれるための物語である5
 「われわれはね、自分の愛する人間を、宝くじみたいに思っていることがあるんですよ。わしら自身のばかげた夢を実現するために、愛する者が存在していると、勘違いしておるんだな」。
 思わず自戒を促される言葉である。そして、多くの人間が、自分と他者の関係をこのように勘違いしていることだろう。では、そうではない関係とは何か?
 「誰かがわたしたちのことを覚えているかぎり、わたしたちは生きつづける」という言葉がその答えであり、本書の主題でもあるように思う。“自分を中心として他者が存在するのではなく、他者の中に存在することではじめて自分が存在する”という考え方。あるいは、「あなたの目をとおして、世界を見直すことを学んでいった、そして、あなたという存在のなかに、かつて少年だった自分をよみがえらせようとした」っていう関係性。本書は、“人生とは他者に読まれるための物語である”ことを教えてくれる。
 下巻は、主人公ダニエルの初体験後のシーンから始まるんだけど、ここら辺の思春期の少年の描写がいいんだよなぁ。「たった一時間で世界を征服したと思いこみ、つぎの一分でなにをうしなうのかもわかっていない、すぐに見透かされそうな、単純な少年にすぎない自分」とかね。思春期って全能感と無力感が躁鬱病のように入れ替わるもんね。それと、友や恋人を裏切ってしまうダニエルの意気地なさ、狡さ、弱さ、臆病さ、かっこ悪さが素直に描かれている。勇敢さをストレートに描くことよりも、こうして大事な人を裏切った後悔の気持ちを描くことのほうが、勇気の大切さが身に沁みて伝わってくるのだ。