秋津温泉 (集英社文庫)
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商品の詳細
- Amazon.co.jp ランキング: #538501 / 本
- 発売日: 1978-01
- 版型: 文庫
- 195 ページ
カスタマーレビュー
温泉文学の古典、戦前の失われた世界への愛惜
川村湊の「温泉文学論」を読んで、読みたくなった。どうして新刊が出ないのか、と思っていたが、今の若者には文体や中身がなじめないのだろう。同じ言葉の繰り返しや、作者独特の言い回しが多用されており、展開もゆっくりで最初は戸惑った。しかし、文体にはリズムがあり、繰り返しも意図されたもので、声を出して読んでみると分かるが、音楽的だ。秋津の失われた静かな雰囲気を表現する通奏低音のように、同じ語が何度も繰り返し使われている。
主人公は、戦災で何もかもを失ったため、戦死した兄嫁と同居し、子供も出来たが、心は秋津温泉の女将との間で、いつまでも、ぐずぐずと揺れ動いている。女将は、戦争前の失われた世界、上層の中流階級が持っていた、文化的で穏やかな世界を象徴しているのだろうか。セックスの描写が霞のかかったようなエロスで、楽しい。

