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能登怪異譚 (集英社文庫)

能登怪異譚 (集英社文庫)
By 半村 良

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  • Amazon.co.jp ランキング: #145883 / 本
  • 発売日: 1993-07
  • 版型: 文庫
  • 166 ページ

エディターレビュー

出版社/著者からの内容紹介
市助には8人の子がいた。その子らが夜ごと寝間をぬけだし、朝までタンスの上に坐っている…。「箪笥」など、能登を舞台に軽妙な語り口で綴る恐怖と戦慄の不思議な物語9編。(解説・郷原 宏)

内容(「BOOK」データベースより)
市助には8人の子がいた。その子らが夜ごと寝間を抜け出して、朝まで箪笥の上に坐っている。そのうちに市助を除く家族全員が夜な夜な箪笥に上がるようになって―。(「箪笥」)。能登を舞台に玄妙な語り口で綴る9つの不思議な物語。独特の画風で人気の村上豊の挿画27点とともに贈る恐怖と戦慄の半村フォークロア。


カスタマーレビュー

恐怖と戦慄の怪異談5
題名の通り、能登に伝わる伝承を基に作者が怪異談に纏めたもの。ただし、どこまでが伝承でどこからが作者の創意なのかは判然とせず、個人的には殆ど全部が作者のオリジナルのような気がする。また、本作の特徴は地の文まで方言で書かれていることで、これはありそうで実は中々無い趣向だ。このため、物語に土着性が増していることは言うまでもない。

全部で9つの短編が収められており、各々、作者の機知とブラック・ユーモアに包まれた怪異談が楽しめるのだが、個人的には本作を知るキッカケともなった「箪笥」が一番怖かった。道具立ては、平凡な漁師一家と箪笥だけで妖怪等に頼っていないのだが、読了した時に込み上げてくる恐怖と戦慄はモダン・ホラーの比ではなかった。

日本人が共有する恐怖感、幻想感に根付いた怪異談の傑作。

上手い落語を聞いた気分。話りの巧さを堪能させられる怪談5
 石川県能登の方言で語られていく怪異譚集。「箪笥(たんす)」「蛞蝓(なめくじ)」「縺れ(もつれ)糸」「雀谷(すずめだに)」「蟹婆(かにばあば)」「仁助(にすけ)と甚八(じんぱち)」「夫婦喧嘩」「夢たまご」「終(つい)の岩屋」の、九つの掌篇が収められています。
 能登の方言と言っても意味は十分に分かりますし、馴染んでくると、その独特の言い回しやゆったりとしたリズムが心地よくなってくるから不思議です。
 全篇を貫いているキーワードは「もっしょい」、これですね。その時々で違う言葉があてられています。「面妖な」「不思議な」「面白い」「奇怪な」「変な」といった言葉の横に、「もつしよい」と、ルビが振ってありました。
 文体・語り口は日本昔話風の体裁をとっていますが、話のキモになっているテーマや趣向には、SFもしくは怪談・綺譚に通じるものを感じました。たとえば、「箪笥」には侵略・変異もののSFの影を、「夢たまご」には荘周が見た「胡蝶の夢」の香りがあるかなあと。
 恐さを基準にインパクトのあった話を選ぶと、「箪笥」「雀谷」「蟹婆」の順かな。やはり、冒頭の「箪笥」の不気味さ、異様な恐さは、ず抜けていると思うから。でも、「夢たまご」の話も大好き。ロシア人形のマトリョーシカみたいな話の構造とか、「夢」のモチーフのふわりとした味わいとか、すごく気に入っています。
 一点、残念に思ったのは、村上 豊の挿絵を話のどこに挿入しているか、そのタイミングですね。編集サイドの問題。見開き二頁の挿絵を先に見てしまうことで、話の向かう先が見えてしまう、ということが何度かありました。文章として読んで頭の中に映像が浮かんだ後、話のその部分を描いた挿絵を見る、そうした配慮が欲しかったですね。

ソニーミッドナイトスリラー5
かつてラジオドラマで放送されていた『ソニーミッドナイトスリラー』。
そのうち第三夜「遥かな迷宮」の二番目でこの作品集から「箪笥」がドラマ化されました。
それを聞いて、ずっとこの説話集を探していましたが、
やっと見つけ出しました。
ドラマではおばあちゃんが語り部になっていましたが、
原作での語り部は男性。
演出家は遠野物語の語り部を念頭に置いたのでしょうか?
確かにこうした民話的な内容は能登と遠野の類似性を見つけることができるかもしれません。

どこまで創作で、どこまでが能登に伝わっていた話なのかわかりませんが、
かつて能登半島の民宿で体験したおばあちゃんから聞いた昔話を思い出します。
すべて一話完結ですが、全9編、能登の不可思議な昔話として残しておきたい雰囲気を持っています。
井上ひさしの『新釈遠野物語』と併せて読み続けたい一冊です。

作者のふるさとでもあり、愛着を感じる作品集です。