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ジャージの二人 (集英社文庫)

ジャージの二人 (集英社文庫)
By 長嶋 有

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  • 発売日: 2007-01
  • 版型: 文庫
  • 222 ページ

エディターレビュー

出版社/著者からの内容紹介
芥川賞作家のアンチ・スロー小説。
失業中で小説家志望の息子。妻はよその男と恋愛中。三度目の結婚生活も危うそうな、写真家の父親。そんな二人が軽井沢の山荘で過ごす、とりとめのない夏の終わりの思い…。(解説・柴崎友香)

内容(「BOOK」データベースより)
恒例の「一人避暑」に行く父親と犬のミロにくっついて、五年ぶりに北軽井沢の山荘で過ごす小説家志望の「僕」。東京に残った妻には、他に好きな男がいる。危ういのは父親の三度目の結婚も同じらしい。―かび臭い布団で眠り、炊事に疲れてコンビニを目指す、アンチスローな夏の終わりの山の日々。ゆるゆると流れ出す、「思い」を端正に描く傑作小説。翌年の山荘行きを綴る『ジャージの三人』収録。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
長嶋 有
小説家。1972年埼玉県生まれ。北海道育ち。2001年『サイドカーに犬』で第92回文學界新人賞受賞。同年、『猛スピードで母は』で第126回芥川賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)


カスタマーレビュー

巧みな文章で綴られる、少々切ない物語4
軽井沢の別荘(といっても、そんなたいしたものではない)における、30歳くらいの息子と父親、それとプラス一人(その際は「ジャージの3人」となる)とのゆるいジャージ生活を描いた作品。
父親と息子、旦那と嫁、息子と娘など、いろいろな人間関係が交差して、物語を作り出している。

小説として面白いか、というとちょっと微妙ではあるが、風景や心理の描写はなかなか巧みで、笑わされたり、ちょっと心を揺さぶられたり、の連続だ。

著者の別名である「ブルボン小林」名義でのエッセイが好きなので本書も読んでみたのだが、エッセイ同様特筆すべきは、「固有名詞の使い方の巧みさ」だと思う。
本書の柱的に使われる「和小学校」を始め、たまに出てくる実在する商品名(ミロとか、アルフォートとか)が、作品を引き締めている感じだ。
もっとも、これは世代が違うなどで通じない人には通じないだろうから、諸刃の剣ではあるだろうが・・・。

分かり合うってどういうことだろう4
都会生活と夏の暑さから逃れるため、北軽井沢の別荘へドロップアウトした父子のスローライフを描いた作品。
この作品に登場する、父子は互いの夫婦仲が上手くいってなくて、人間関係に疲れてしまっている。
生きていくうえで避けることはできない人との関わりだけど、どんなにがんばっても、万事良好ということにもできない。だから面倒だとか鬱陶しくなって気疲れしてしまうのだけれど、親子であってもそうなのだから、突き詰めれば他人の夫婦なら、なお分かり合えくて当然であるのかもしれない。でも、そんな少しの可能性だから、分かり合えたときには奇跡のようにうれしく思えるのだろうか。
この作品は、淡々とした別荘地での生活を描きながら、人と人とのつながりをゆっくりと描き出してゆく作品である。
なお、本作には、表題作のほか、その次の年に再び軽井沢を訪れるもようを描いた「ジャージの三人」が併録されている。

シンクロする時間感覚5
 一般的な小説的技法が使われない。たとえば、心理描写や長い独白がない。描かれるのは断片的な思考の切れ端だけだ。また、登場人物に対する第三者視点からの説明描写がない。いわゆるト書きに当たる部分だ。これら説明的な描写がほとんど無い。
 畑の真ん中一カ所だけで携帯の柱が三本立つ…だーっそんなこと大の大人なら無視してしまう極小エピソードだ。しかも妻の不倫と父の三度目!の結婚生活の破綻と、学校生活に行き詰まっているらしい義妹と、重要モチーフは満載の小説なのだ。これをドラマチックに盛り上げることなど、幾通りも思いつく。
 だが「僕」は、ぼんやりとあせりながら、もらいもののトマトの使い道に悩んだりミロの散歩にうつつを抜かしたり、花輪和一の漫画を読んだりしている。重大な事項と些末な事項が、同じレベルで「僕」を取り巻き、現実と同じ速さで小説内の時間が進んでいく。
 今までこの作家の読み方がわからなかったが、少しわかったような気がしてきた。ゆるゆると面白い。映画化されるそうなので、そちらも楽しみだ。