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総統の子ら〈下〉 (集英社文庫)

総統の子ら〈下〉 (集英社文庫)
By 皆川 博子

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  • 発売日: 2006-12
  • 版型: 文庫
  • 382 ページ

エディターレビュー

出版社/著者からの内容紹介
<時代>という運命の中に展開する壮大な物語。
カールはヒトラー・ユーゲントで戦車中隊を率いることに。西部戦線に連合軍が上陸し、激戦の後、捕虜となる。ドイツは敗れ、敗戦国だけが悪になり、誇り高き軍人はあらゆる罪を負う。渾身の大作。

内容(「BOOK」データベースより)
1942年、フランス。親衛隊所属となり過酷な戦いを強いられてきたカールは、束の間の休息を得ていた。一方、ヘルマンはソ連軍に捕らえられ捕虜として屈辱の毎日を送っていた。それでも「戦争」は続く。「ヒトラー・ユーゲント」の時代を生きた男たちの、心の軌跡をたどり、運命に翻弄されゆく姿を描く長編ここに完結。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
皆川 博子
1930年1月2日生まれ。東京女子大中退。85年「壁―旅芝居殺人事件」で日本推理作家協会賞、86年「恋紅」で直木賞、90年「薔薇忌」で柴田錬三郎賞、98年「死の泉」で吉川英治文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)


カスタマーレビュー

壮大な歴史絵巻5
読後、しばらく絶句・・・。
ここに描かれているのはなんとも壮大な歴史絵巻です。
しかし、なんと酸鼻を極めた絵巻でしょう。
前半の煌めくような青春は、ヘルマンの落馬と同時に、
否応なく陰惨な歴史の中に巻き込まれて行きます。
戦争に正義はない。
ナチスも、ボリシェビキも、パルチザンも、
ドイツも、ソ連も、フランスも、米英も、
結局、同じ穴の狢。
でも、どの国にもやはり、青春の煌めきはあったはず。
なんともやりきれない想いです。
自分の周りが平和で良かったと心の底から思います。
と、同時にその平和は、過去の人々、現在の遠い国人々の犠牲で購われている
その事実から目を背けてはならないのだと、強く思います。

歴史は多元である5
「歴史は多元である」というのは、大学時代の恩師の言葉だが、この本の感想は、まさにこの言葉がぴったり来る。
歴史というものは、当事者の立場や主義主張によって、これほどまでに異なる側面を見せるのだろうか。
今まで映画や小説でナチス・ドイツはホロコーストなどから、悪の権化のような描かれ方をして来たが、その裏にはこのように複雑な当時の欧州の情勢があったということを、私は全く知らなかった。
なぜ、ナチスはユダヤ人をああも迫害したのだろう・・・??
キリストを十字架に架けたから?
自らの祖国を持たない流浪の民だから?
その程度の認識しかなかった。
こうした誤った認識はもしかしたら、四方を海に囲まれ、一度も(鎌倉時代の元寇を別とすれば) 他国の侵略を受けたことのない日本人には、ごく標準的なものなのかもしれない。
本当の意味での他国の蹂躙を受けたことのない日本人には、イデオロギーや人種で数百年に渡って、血で血を洗う争いを繰り返して来た中で培われた当時の欧州の情勢は、想像を絶するものがある。
登場人物たちそれぞれの、憎悪や悲哀は、幾度も先を読むのを躊躇わせた。彼らの少年時代が光り輝くものであったがゆえに、その未来は哀しい。
確かに、ナチスは裁かれて当然の行いをした。
しかしでは戦勝国側に,一篇の罪もないのだろうか?
彼らは真の意味での、抑圧された民衆の解放者だったのだろうか・・・?
このことは欧州だけの問題ではなく、日本人として、私たち自身も避けては通れない問題である。
あの大戦で、日本は周辺諸国に多大な犠牲を強いた。そして自身も大きく傷ついた。
だが、そのことに戦後、私たち日本人は、本気で向き合って来ただろうか?
ドイツはベルリンの壁によって国を分断されていたから、否応なく戦後ナチスの不の遺産と正面きって向き合ってきたが、日本人は経済発展に目を逸らしてはいなかっただろうか・・・。
哀切としか表現できない物語であるがその中で、唯一の救いは、主人公の一人であるカールの言った、「部下の罪は自分の罪だ」という内容の発言。
あれほどの地獄を体験しながら尚、高らかにそう宣言できる彼の気高さは、涙なくしては読むことが出来ない。
彼には、ヘルマンという憧憬の対象と、エルウィンという真の戦友たる存在があったから、戦勝国側の不当な刑罰も甘んじて受け入れることが出来たのかもしれないが、その最期が清冽であればあるほど、歴史の不条理が際立つ。