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蚊トンボ白鬚の冒険〈上〉 (講談社文庫)

蚊トンボ白鬚の冒険〈上〉 (講談社文庫)
By 藤原 伊織

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  • 発売日: 2005-04
  • 版型: 文庫
  • 397 ページ

エディターレビュー

内容(「BOOK」データベースより)
羽音と不思議な声がすべての始まりだった…。陸上競技への夢を断念し、水道職人となった若者・達夫の頭の中に、ある日奇妙な生物が侵入してくる。その名も蚊トンボ・シラヒゲ。超人的能力を得た達夫は、アパートの隣人・黒木を理不尽な暴力から救う。しかし、それは恐るべき闇社会との対決を意味していた。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
藤原 伊織
1948年大阪府生まれ。1973年東京大学文学部仏文科卒業。1985年「ダックスフントのワープ」で第9回すばる文学賞受賞。1995年『テロリストのパラソル』で第41回江戸川乱歩賞を全選考委員の絶賛をあび受賞。同作品は翌年、第114回直木賞にも輝く(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)


カスタマーレビュー

浅い 惜しい3
「テロリストのパラソル」で江戸川乱歩賞、直木賞を受賞し、「ひまわりの祝祭」「てのひらの闇」「雪が降る」と、質の高い作品を世に送りだした作家の最新長編ということで、楽しみに購入した。しかし、期待が高かったせいか、満足を得られなかった。
この作品を一言でたとえるなら、「高級食材のごった煮」とでもいおうか、主人公の白髭・達夫をはじめ、脇役の黒木、瀬川、カイバラなどのキャラクターの設定はさすがであるが、それぞれを生かし切れていない。
「達夫はなぜほとんど面識のない黒木を命をかけてかばい、そして数度しかあったことのない恋人真紀を救いにいくのか」「なぜ、黒木と瀬川が敵対するのか」「なぜカイバラは異常なまでの執念を持ち続けるのか」といった動機付けが不十分で、!感!情移入できないまま何となく物語が流れていってしまう感じである。
587ページもの長さでありながら、作品自体に厚みを感じないのは残念である。
先述した登場人物の設定、終盤のカイバラ対達夫など、作者の力量にうならされる部分もあり、次回作に期待したい。
「もう一息」ですごい作品になったのではないかと思うと、大変に「惜しい」作品である。
本作品は2002末のこのミスでベスト20にはいらず、実質22位だった。

柔らかい絶望4
他のレビューでもいわれている通り、主人公達夫が黒木にここまで義理立てする必要もない。カイバラとの決着をつける必要もないし、真紀とは事実恋愛していたのか、と首を捻る部分もある。
しかし何故そうしたのか、は説明できると思う。達夫は走ることを奪われて以来、真っ当に生きるしかやることがなかったのだ。真っ当に生きるために不条理に見えるコースを走り出し、ひとたび走り出してしまえば止まることが出来なかった。
白鬚の助けを得ても、達夫の行動は自らを殺める為のランニングでしかない。しかし、そんなストーリーを悲嘆交えず淡々と、むしろ柔らかく描いている点が素晴らしいと思う。

ただし、本筋に関係ない説明がくどすぎる点は確か。また、黒木の造詣が個人的に好感を持てなかったのも残念。達夫以外のキャラクタの背景の描き方が今ひとつといったところ。背景を殆ど持たない白鬚は、だからこそ生きている。

儚い生命の蚊トンボが(と)過ごす3日間の冒険のSF小説4
読み出してすぐに、岩明均氏の「寄生獣」のミギーを思い出しました。

基礎は全く一緒ですね。蚊トンボが主人公の頭の中に住み着き、主人公は
特殊な能力を得ます。そして奇妙な事件に遭遇し、蚊トンボと一緒にその
問題に立ち向かっていく、という話です。

所詮SFなのでリアリティを求めてはいけないのでしょうが、主人公が若干20歳
でヤクザ相手に立ち回ったり(ヤクザ物小説を好む人向け?)、初対面の28歳の
女性に言い寄られたり(ハードボイルド小説を好む人向け?)、と著者の無理やりな
サービス精神を感じつつ読みました。

じゃ、なぜ星4つなのよ?といわれると、儚い寿命で主人公に手を貸してきた
蚊トンボが消え行く場面が泣けました。全然そこを盛り上げよう、泣かせようと
著者はしていないのですが、自分はどうも、、、こういうのに弱くって。。。

色々と無理がある展開がありますが、ま、そこはSFだと思って、楽しんで読める
人ならば、それなりに楽しめる一冊だと思います。