不夜城 (角川文庫)
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商品の詳細
- Amazon.co.jp ランキング: #92743 / 本
- 発売日: 1998-04
- 版型: 文庫
- 533 ページ
エディターレビュー
出版社/著者からの内容紹介
アジア屈指の歓楽街・新宿歌舞伎町の中国黒社会を器用に生き抜く劉健一。だが、かつての相棒・呉富春が町に戻り、事態は変わった。生き残るために嘘と裏切りを重ねる人間たちの危険な物語。(北上次郎)
内容(「BOOK」データベースより)
新宿・アンダーグラウンドを克明に描いた気鋭のデビュー作!おれは誰も信じない。女も、同胞も、親さえも…。バンコク・マニラ、香港、そして新宿―。アジアの大歓楽街に成長した歌舞伎町で、迎合と裏切りを繰り返す男と女。見えない派閥と差別のなかで、アンダーグラウンドでしか生きられない人間たちを綴った衝撃のクライム・ノベル。
内容(「MARC」データベースより)
おれは誰も信じない。女も、親も、同胞も。自分さえも…。アジアの大歓楽街・新宿歌舞伎町で、迎合と裏切りを繰り返す男と女。見えない派閥と差別の中で、アンダーグラウンドでしか生きられない人間たちの生き様を克明に描く。
カスタマーレビュー
どもまでも黒い
主人公が黒い。
ヒロインも黒い。
黒くない人物がいない!!!
すえた匂いが行間から漂ってきそう。
どこまでも硬質。
普通、一般のハードボイルド作品は主人公が事態を好転させようと動く。でもここでの「好転」はあくまで世間のモラル、
一般常識に合わせた「好転」だ。麻薬組織の壊滅とか凶悪犯の逮捕とか。
ところが本書の主人公の「好転」はあくまで自分にとってのものだ。
自分が生き残るためにどうするか。生き残るためなら、友を売る、嘘をつく、人を傷つける。なんでもする。
主人公はラストまで自分のスタンスを変えない。
悪党のまま物語はおわる。
またヒロインも同じだ。他人には理解できない枠枠組みを引きずって、
悪女として物語を一層黒くしている。
最高におもしろかった。
エンターテイメントってこうじゃなくちゃいけないと思う。
最近読んだおもしろい小説は?と聞かれたら、向こう1年くらいは「不夜城」と答えます。
恋愛至上主義のアンチテーゼとして
この小説は恋愛小説ではないが、私は恋愛小説としても非常に価値の高い小説ではないかと思う。
詳しくはいえないのが残念だが、主人公とヒロインはお互いを「愛している」という気持ちを持ちながらも裏腹の行動をとり続ける。
お互いを「背徳的行為」に駆り立ててしまうのは、かれらがそれまでの人生の中で享受し得なかった愛情への疑念であり、したがってかれらの行動原理あるいは規範の中では「愛情」は最上位に価値づけられる概念ではない。しかしその中で、かれらは最大限に「愛しあう」。そして「一般的」価値観からすると、悲劇的な結末が待っている。しかしその愛は偽りだった、とは絶対に言うことはできないと思う。かれらは最大限の愛情をもってお互いを「愛した」のだ。
「愛がすべて」という恋愛至上主義に対し一石を投じる作品である。
歌舞伎町という至高の舞台。そこでのみ、そこだからこそ輝く主人公。
この日本に新宿歌舞伎町という場所が存在する事実に感謝したい。面白いハードボイルドには死と犯罪の匂う舞台が不可欠です。治安が悪化したとはいえ国際的な水準で見ればまだまだ安全な日本において、これ以上にハードボイルド小説の舞台に相応しい刺激的な街が他にあるでしょうか。誤解を恐れずに言えば、今後の表現者のためにも歌舞伎町には危険に満ちた場所であり続けてほしいものです。
その歌舞伎町を舞台にした本書ですが、内容に目を転じれば、あらゆる人間関係において信頼関係というものが一切成立していないことに驚かされます。北京、上海、台湾、香港。故買屋、マフィア、移民の長。あらゆるルーツを持ったあらゆる身分の人間が、ビジネスのため、サバイバルのため、次々に他人と手を組みして裏切っていきます。善意というものがまったく存在しない世界なのです。
そのような冷酷な世界を生き抜いていく主人公健一にも当然善意はありません。台湾人と日本人のハーフであり、誰の愛も受けたことがなく、ゆえにその本質として決して誰も信じることのない彼にとってのすべては「生き残ること」。生き残るために自分に関わるすべての人間を欺き利用する健一には救いの要素というものが全くありません。
冷たい舞台に冷たい主人公。にも関わらず文脈から熱い魅力が吹き付けてくるのは、この両者が幸福に融合しているからでしょう。歌舞伎町という舞台だからこそ、健一が繰り広げる「弱者の闘い方」は矛盾混じりの共感を呼び、また健一という主人公の視点だからこそ、偽りだらけの歌舞伎町に真実の魅力が垣間見えてくるのです。
「舞台」と「主人公」という二大要素がこれほど力強くて、面白くない訳がありません。本作品が90年代ハードボイルドの金字塔に位置付けらているのも納得です。





