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ハッピー・バースディ (角川文庫)

ハッピー・バースディ (角川文庫)
By 新井 素子

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  • 発売日: 2005-09-22
  • 版型: 文庫
  • 383 ページ

エディターレビュー

出版社 / 著者からの内容紹介
「いい気になるなよ」—−その一言があたしを殺す。
やさしい夫がいる幸せな家庭。そのうえ小説家としても成功し、何も不足のない日々をすごしてきたあきら。幸せいっぱいの日常が少しづつ、変わっていく。悪いのはあたしなのか、それとも——。待望の文庫化。

内容(「BOOK」データベースより)
あなたが傍にいてくれるからあたしはとっても幸せ。初めて書いた小説が新人賞を取って、ベストセラーになったのも、あなたが勧めてくれたから。だけどあたしを脅かす、一本の電話がかかってきて―。大学の先輩だった公人と結婚したあきらは、家ではもちろん、仕事でも成功し、幸せな時間を過ごしていたはずだった。だが、たった一瞬の偶然の出会いが、あきらの世界を壊しはじめる。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
新井 素子
1960年東京生まれ。立教大学卒。1976年、『あたしの中の…』で第一回奇想天外SF新人賞佳作入選。1999年『チグリスとユーフラテス』で第二十回日本SF大賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)


カスタマーレビュー

恐ろしく読後感の悪いサイコホラー作品4
主人公はあきらと裕司。ほんのちょっとした偶然から起こる事件を, 加害者側と被害者側の二つの視点で描くホラー作品。

あきら 沢木明 32歳 女性。旦那に依存気味の売れっ子新人小説家。
裕司  市原裕司 18歳 男性。東京に負けたと思い込んでいる浪人生。
喫茶店でたまたま居合わせた二人。バシャバシャとシャッターを切るカメラマンに裕司は憤るが、インタビュー中のあきらはそれさえ知らない。そしてたまたまご近所さんだった。あきらは御町内問題マンション。裕司は裏の築ウン十年のアパート。
ほんのちょっとの偶然が・・・ほんのちょっとタイミングが悪かったばっかりに・・・恐怖に変わっていきます。そしてハッピーエンドと思いきや・・・そこは本領発揮。そうはいかない。人間が壊れてゆく様を淡々と描きます。

ひたひたひたひたひた・・・と何かが近づいてくる、そんな表現が当てはまる怖さです。「くますけと一緒に」以来の恐怖を感じました。新井素子らしい恐ろしく読後感の悪い一冊です。心理的恐怖を味わいたい(特に主婦)方にはオススメ。

新井素子の陰のほうの作品 3
 ハッピー・バースディと聞くと普通はすごく幸せな連想をするでしょう。色とりどりのろうそくがささったケーキ。ラッピングされたプレゼント。ちょっとした「おめでとう」の言葉。暖かい部屋。お祝いメール。花束。プレゼントの包みをあけるときのわくわく。誰かのバースディプレゼントを選ぶときのわくわく。そういうものを思い浮かべるでしょう。もちろん、あの有名なハッピー・バースディのメロディも思い浮かべるでしょう。中には、電気グルーブのほうを思い浮かべる方もいるかも知れません。ともあれ、楽しいイメージを思い浮かべることでしょう。
 しかし、この小説はそれらのイメージを覆します。ハッピー・バースディという楽しいうきうきるようなタイトルとは対極のかなり思い詰めた小説です。下手に書き込むとネタバレしてしまうし興趣を削いでしまうタイプの小説なので敢えて内容には触れませんが、かなり重いし苦しいです。特に前半から中盤にかけてはかなり気持ち悪い展開をします。強いてキーワードを挙げれば「電話」がその主役になりますが、かなり苦しい気持ちになります。いつもはのほほんとした文体の新井素子さんですが、同じのほほんでここまで気持ち悪いことが出来るのはこれこそ芸なのでしょう。
 ともあれ、先日取り上げた「グリーン・レクイエム」「緑幻想」や「新婚物語」などを彼女の陽の作品とするならば、これは陰のほうの代表作といってもいいでしょう。

うわ もったいない2
導入部で主人公の外見的特徴がかなり詳細に説明されているのにそれが本編にいっさい反映されていないのが すごくもったいない。

サイコホラーと分類されるこのストーリーにここまでトコトンの“素子節”。同ジャンルの『おしまいの日』の方がまだ読みやすかったと思います。