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天皇制の文化人類学 (岩波現代文庫―学術)

天皇制の文化人類学 (岩波現代文庫―学術)
By 山口 昌男

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  • 発売日: 2000-01
  • 版型: 文庫
  • 288 ページ

エディターレビュー

出版社/著者からの内容紹介
天皇制は制度・イデオロギーとしてばかりでなく,美学的・宗教的に日本人の精神構造を規定してきた.著者は権力の中心と周縁のダイナミックな関係に着目し,英国の王権研究の成果や謡曲「蝉丸」をめぐる論考を手掛かりに,天皇制を支え天皇制によって補強される美意識と,この美意識を可能にする宇宙論的モデルの解明を行う.


カスタマーレビュー

文化記号論の視点から見た「天皇制」=「王権」の深層構造5
1989年に立風書房から刊行されたものの新編集版。なお同著者「知の遠近法」(岩波書店1978年)と、一部内容が重複している。
本文庫版の目次は以下の通り。第一部:I.王権研究の現在、II.王権の象徴性、第二部:III.天皇制の深層構造、IV.天皇制の象徴空間、V.「源氏物語」の文化記号論、第三部:VI.権力のコスモロジー、VII.政治の象徴人類学へ向けて、私の天皇制研究のアルケオロジー-文庫版の解説に代えて-。
本書で筆者は、天皇制の深層構造としての「王権」について文化記号論の立場から、その深層構造を明らかにすることを意図している。第一部および第二部では、主として、トマス・ハーディ「キャスターブリッジの町長」、謡曲「蝉丸」、紫式部「源氏物語」に対する文学批評を通じて、これらの文芸作品の世界観を形成しているところの王権と貴種流離譚の構造について検討している。また第三部では、日本・ブラジル・ナイジェリア・バリ等における民族誌、あるいは中国「四人組」裁判などを例にとり、人間の世界認識のあり方の一つとしての王権と、その表現形式としての政治との間との関係について論じている。
本書を通じて、王権の構造は決して単に考古学・文化人類学の領域の中だけの問題ではなく、それは日常の生活世界の「内」と「外」との境界を秩序立てる構造であり、実は現代の私たちの生活世界の中に、可視的・不可視的を問わず存在しているものであるということに改めて気づかされた。また、近現代における国際政治関係を再考する際にも、こうした視点は有用であると思わされた。

自分を規定しているもの5
 天皇制とはイデオロギーや制度の問題だけではなく もっと日本人の精神の根源に基づく制度であるという主張だ。

 著者の世代は戦前戦後を直接体験してきている。天皇制に対する感覚は 戦後生まれの僕とは全く違うだろう。僕自身は天皇制が目に見えて時代を覆った時代を知らない。それだけに 中立的な立場で天皇制を見れてしかるべきである。
 しかし それは本当なのだろうかと問いなおしているところである。

 著者の挑戦は 「戦争というフィルター」を外して天皇制を見たら何が見えるのかという点に尽きると読んだ。その意味では「戦争というフィルターをそもそも持ち合わしていない戦後生まれ」という立場の僕としては 実は驚くほどに 天皇制と自分との距離感が「近い」ことに気がつく。日常生活で天皇制を意識している積りは無いが 自分の無意識から時折泡のように浮かび上がる「日本観」の中には はっきりと天皇制があることに気がつくからだ。
 それを解き明かそうとする場合 本書は示唆に富む。天皇制という固有名ではなく「王権」という より普遍的な地平線で それを自分なりに整理できる手助けとなるということが僕の直感である。

 僕らは 自分でも気がつかないうちに 色々なモノに規定されている。天皇制もその一つかもしれない。
 「規定」とはもちろん悪い意味を込めているわけではない。何かに規定されている自分とは その規定も含めて既に自分自身になっている。そういうことなのだと思う。