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贅沢の条件 (岩波新書)

贅沢の条件 (岩波新書)
By 山田 登世子

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  • 発売日: 2009-07
  • 版型: 新書
  • 202 ページ

エディターレビュー

内容(「BOOK」データベースより)
「あなたにとって贅沢とは何ですか?」―贅沢はお金で買えるのか、買えない贅沢とは何か。「タイム・イズ・マネー」の呪縛にとらわれた世界にあって、「真の贅沢」とは何なのか。著者ならではの冴えた批判精神のもと、中世修道院文化からココ・シャネル、白洲正子まで、豊富な実例を読み解く。そこに浮かびあがる「現代の贅沢」とは。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
山田 登世子
福岡県生まれ。現在、愛知淑徳大学教授。専攻はフランス文学、文化史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)


カスタマーレビュー

本物の贅沢というパラドックスを見詰める5
贅沢とはお金があればできるものではない。「金目のものをひけらかすのは成金趣味であって、およそエレガンス(優雅)にはほど遠い」(p3)。「優雅な生活」こそ本物の贅沢なのだが、あくせく働く資本主義の現代では、それはなかなか難しい。著者は、「労働」を軽蔑したヨーロッパの貴族社会から、「勤労」を尊ぶ産業社会への転換、そして明治以来のモダンな贅沢を堪能した日本人として、与謝野晶子、森鴎外の娘の茉莉、白州正子などを回顧する。第4章「禁欲のパラドックス」が面白い。禁欲の権化であるヨーロッパの修道院が、贅沢と結び付くのだ。20世紀モード革命の先頭に立ったココ・シャネルは、12〜17歳の多感な年頃を、フランスの田舎オバジーヌ村の孤児院で過ごした孤児だった。この孤児院は中世以来の古い修道院にあり、一切の華美を廃し、窓は色付のステンドグラスではなく「白ガラスと鉛だけ」で出来ている。この白ガラスと鉛の色こそ、シャネルの「白」と「黒」の原点なのだ(129)。彼女の、ジャージーという素材もそうだが、質素な素材から優雅な美が生まれるのが、20世紀ファッションの贅沢の逆説である。イタリアでもっとも贅沢でリッチなホテルは、修道院を改修したもので、絶妙の環境の中にあるという。また、フランスのエリートの贅沢な別荘は、昔の農家を買い取って、中だけ改修したものという。本物の贅沢は、やはり優雅で洗練されている。

実に贅沢な試み5
欧日における古今の文脈に贅沢のありよう・あり方をたずねる佳作。著者が明確なイメージをもって
研究に入っていることもあり、焦点の定まりようは、終始読者の期待をそがない。研究者として客観性
を失うことはない。同時に、審美者として憧憬を失うこともない。この不安定な平衡状態を維持してい
るのは見事。さすがはバルザックの「あれ」の翻訳者。

大切なのはその文体。贅沢を論ずる文体が貧相で何が語れよう。文字面から香る色気にこそ、贅沢の研
究から入り、贅沢を探求し、贅沢を垣間見るに至った著者の境地がひっそりと宿るさまを心地よいと云
わずして、何とする。

贅沢の諸相4
 予想されたこととはいえ、「贅沢とはやはり閑暇」なのである、という結語は、陳腐である。とはいえ、「贅沢」にまつわるもろもろの話として読めば、面白い話が多い。
 なかでも興味深いのは、修道院にまつわる話である。世俗から離れ、長い伝統のある場所。著者の物言いをそのまま受け取れば、現代の贅沢のルーツをたどると、総てが修道院の伝統に行き着きそうである。歴史の風雪に耐えた建物、素晴らしい眺望、樹齢数百年の大樹。見事な「農家」も、その延長線上にあるだろう。
 ただ、シャネルのデザインの発想の源が、彼女の育った修道院にあるということはよくわかったが、著者の説明からは、シャネルのデザインと贅沢さの関係を理解することができなかった。むろんシャネルをはじめとするブランド品が、素材を選びぬき、緻密な手仕事によって作り上げられているがゆえに非常に高価な品となっていることは理解できる。それが贅沢なものであることはわかる。だが、そのこととデザインがラグジュアリーな製品の大きな要素になっていることとは別の問題だろう。
 軽い読み物としては、様々な発見がある。フランスのブランド品が、第二帝政期にナポレオン三世が、国際競争力を持った奢侈品産業として育成されたものであること。パリ万博で、金・銀・銅のメダルを授与されたことをきっかけとして、ラグジュアリー・ブランドになっていく。ブシュロン、クリストフル、バカラ、ルイ・ヴィトン等々。この万博のメダル授与のシステムをオリンピックが踏襲したとは、意外だった。