リストラとワークシェアリング (岩波新書)
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商品の詳細
- Amazon.co.jp ランキング: #176697 / 本
- 発売日: 2003-04
- 版型: 新書
- 213 ページ
エディターレビュー
出版社/著者からの内容紹介
高まる失業率,熾烈な人べらしリストラ,職場ではサービス残業と長時間労働,そして低賃金のパートタイマー.こうした企業社会の現実を綿密に分析し,打開策としてのワークシェアリングを,〈一律型〉と〈個人選択型〉モデルを設定して論じる.日本での厳しい条件を考慮に入れながら,実現の必要と可能性について真摯に検討,提言していく.
内容(「BOOK」データベースより)
高まる失業率、熾烈な人べらしリストラ、職場ではサービス残業と長時間労働、そして低賃金のパートタイマー。こうした企業社会の現実を綿密に分析し、打開策としてのワークシェアリングを、“一律型”と“個人選択型”モデルを設定して論じる。日本での厳しい条件を考慮に入れながら、実現の必要と可能性について真摯に検討、提言していく。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
熊沢 誠
1938年三重県に生まれる。1961年京都大学経済学部卒業。1969年経済学博士。専攻は労使関係論、社会政策論。現在、甲南大学経済学部教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
カスタマーレビュー
一律型ワークシェアリングの必要性を説く
リストラとワークシェアリングが併存するわが国の現状を批判し、その解決策として「一律型ワークシェアリング」の導入を求める。
当たり前のごとく行われているサービス残業や恒常的な長時間残業。他方では高い水準で推移する失業率。その矛盾を解くカギが一律型ワークシェアリングのなかにあるという著者の主張は、わかりやすく説得力がある。労働経済学の第一人者で、しかも国内外の労使関係と作業現場を知り尽くしている著者ゆえ、書かれている内容は精緻で信頼性がある。そのうえ、作家顔負けの文章力で「しんどい」内容にもかかわらず読者を飽きさせない。
「熊沢ファン」ならずとも次作を期待してしまう。
いつまで「精鋭」でいられますか?
少子高齢社会を迎えるに当たって、〈個人選択型〉ワークシェアリングが求められているのかと思えば、著者は〈一律型〉こそ重要と説いている。現在の日本企業はいまだ正社員のフルタイムが長すぎ、そこを放置するなら新しい雇用機会は生み出せないという主張には納得できる。
「精鋭」の労働時間を短縮して「そこそこ」のひとたちの雇用を守るのが〈一律型〉ワークシェアリング。そうすると人件費は増加して生産性は低下する、というのが経営者側の論理であり、企業はこれに消極的にならざるを得ない。
「精鋭」とは長時間労働をいとわず成果を誇れる人たちで、企業からしてみれば彼らだけが残ってくれればよく、「そこそこ」の人たちはすなわちリストラの対象でしかありえない。それをやむを得ないと組合幹部ですら受け止めている悲しさ。「精鋭」たちも時短に伴い自らの報酬が減るのは素直に受け入れられない。
ただ、この「精鋭」たちの生活あるいは人生がどのようなものであるかは、すでにバブル期に暉峻淑子『豊かさとは何か』(岩波新書)でも述べられていた。否応なしに「精鋭」たらざるを得ない人々は私の周りにも多い。
タイトルがそうであるように、リストラとワークシェアリングについての理解を深めるのに大変役立つ。現在「精鋭」の人、「そこそこ」の人、パートタイマーの人、そして潜在失業者を含む失業中の人、それら多くの人たちにとって現状の認識と方向性の示唆に富んだ一冊である。
現状追認の危険性
熊沢誠の著作は大好きでずいぶん読んだが、時代が後になればなるほど、かつてのラディカルさがしだいに影をひそめ、現状追認的になっているような気がする。それは、著者自身が老いたせいばかりでなく、日本社会の右傾化と企業権力の圧倒的な力量から来るある種の絶望感のゆえなのだろう。
本書もそのような傾向を感じさせる。著者は、労働を取り巻く現在の過酷な状況を手際よく紹介した上で、それに対するオルタナティブの一つとしてワークシェアリングの可能性を論じる。労働時間の短縮の有無、雇用が保障される、ないし新たに雇用される労働者の「雇用の質」(時間給の水準、雇用形態)、雇用効果のおよぶ範囲、すなわち既存の雇用の維持にとどまるのか、新規雇用の増加があるのか、という3つの基準を提示して、それぞれの組み合わせによってワークシェアリングの質を評価する。
最も有利な組み合わせは、「労働時間の短縮―雇用の質の維持―新規雇用の増大」というパターンであり、最も不利なのは、「労働時間の短縮なし―雇用の質の低下―既存労働者の雇用維持」という組み合わせである。
著者は現在の状況の厳しさから、不利なパターンに近いものでも、現状よりはましなものとして受け入れざるをえないと考えているようだ。従業員を半分に減らそうとする企業側の提案に対して、給料を半分に減らして従業員数を維持する組合側の逆提案がワークシェアリングとして評価されているが、これでは賃金を減らしたい企業の側の思うつぼではないか?
また、著者が、低賃金ゆえに自立できない労働者のことを指して括弧なしで何度も「パラサイト」という表現を使っていることには違和感を感じた。





