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新渡戸稲造論集 (岩波文庫)

新渡戸稲造論集 (岩波文庫)
From 岩波書店

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  • 発売日: 2007-05
  • 版型: 文庫
  • 340 ページ

エディターレビュー

内容(「BOOK」データベースより)
日本と外国をつなぐ「太平洋の橋」となりたいという若き日の大志は、後年、英文の『武士道』以下数多くの著作や国際連盟事務局次長としての活躍となって実を結んだ。在野の私人として生涯を送った札幌農学校の同期生内村鑑三とは対照的に、生涯を公人として過ごした新渡戸稲造(1862‐1933)の、教育論・人生論・デモクラシー論・国際関係論にわたる多面的な論稿を収める。


カスタマーレビュー

高潔な精神そのまま5
札幌農学校、東大、ジョンズ・ホプキンス、ドイツ留学で学位取得。フィラデルフィア出身のメリー・エルキントンと結婚。東大・京大の教授を務め、国際連盟事務局次長などを歴任した新渡戸は和魂(漢文の素養も含む)洋才の学識に裏付けられたグローバルな見識の持主だった。ジョンズ・ホプキンス時代に後に大統領になるウッドロー・ウィルソンと親友関係であり、初代学長ギルマンからも知遇を得ている。
新渡戸の教育観を読んでいると、19世紀のアメリカがドイツの高等教育から摂取した大学院教育の中でもアメリカ流の<自由>な様式を好んでいたことが判る。日本はドイツの初等中等教育制度を入れて関係で、詰め込み主義で生徒が考える自由やゆとりがないことを批判的に見るなど、人間本来に与えられた自由を活かし、民主主義を醸成するに重きをおいた見方は、最初の留学地ボルティモアのジョンズ・ホプキンスで身につけたものであろう。
また当時の国際的な欧米諸国の歴史や文学思想にも深く通暁し、ゲーテのファウストは20回以上読んだという碩学である。現代に生きていても世界に通じる見識の持主で、単に「武士道」の著者だけではない。その全体像を把握するには絶好の著作である。新渡戸の全貌を知るには全集を読まざるをえないと考えていた人には格好の論文集。
中曽根政権時にジョンズ・ホプキンス大学は日本政府から基金の提供を受ける、受取に来た学長以下関係者が岩手の墓前に詣でて謝意を伝えた。同窓生が何時母校に報いてくるか全く予知できない。教育の偉大さである。ジョンズ・ホプキンス大学史には新渡戸の5千円札写真とこの逸話が記されている。生涯の大半を教育者として生きた著者に相応しいエピソードで、その精神を自ら生前に書き残したのが本書である。彼の思想は未だに活きている、教育改革関係者には必読と言いたい。

稀代の国際派、新渡戸稲造に学べ5
この本は、新渡戸稲造の思想を知ることのできるような小論を、それまで全集に未収録だったものも含めまとめたものである。教育論、人生論、デモクラシー論、国際関係論と分かれていて、それぞれ小論が収録されている。

新渡戸稲造は教育者として有名だが、彼の述べる教育論は今日においても傾注すべきことがらが多い。日本人は外国の学問を学ぶ際、文字を頭に入れるだけで、その精神を理解しようとしない、そのくせ大業な書物を読みたがると彼は言う。

リードとスタディは別である。日本人は本を読んでばかりいるが、ただのリーディングは眠っているのと同じである。スタディとは人の本を読むに当たっても、いちいち正しいか、間違っているのか、自分で判断を下していくことである。

誰がこういったとか、ああいったとか言っているうちはまだまだで、自分自身の確信を持てるようになるのが、真の教育の成果だ。

学校とは技術・芸能ではなく理想を養うところであり、社会に出たら、事に当たって、その理想を思い出し考えることが必要だと説く。

教育の目的のひとつとして人格を養うというのがある。何事についても何かを知っている、"something of everthing"、というのが大切だ。つまるところ、教育とは人間の製造である。日本においては、人の判断が金や地位で定まってしまう。そうではなく、人格そのものが判断のもととなるべきである。

新渡戸稲造は国連の事務次長まで勤めた国際派である。そのためもあって、日本人ばなれしたコモンセンスと、バランス感覚を持っている。しかし日本では「武士道」を書いた人、5千円札の肖像になった人ぐらいの評価しかうけてない。

だが、「太平洋の架け橋になる」と豪語したまでの本当の国際派が今ほど待たれる時代はないと思う。新渡戸稲造を見直し、彼に続く国際派がどしどし輩出していって欲しいものである。

名著「武士道」の作者の国際感覚に学ぶ4
多くの人は、新渡戸稲造というと、名著「武士道」の著者というよりも「5千円札の人物」というイメージが強いのではないだろうか。何故、この人物が、数ある日本近代の偉人の中で、1万円の福沢諭吉(1834-1901)と並んで5千円札の顔として選ばれたのか、この本をしっかりと読んだ瞬間に理解できるはずだ。

この著は、現代の日本人に、狭い視野を捨て、世界史的な視野から日本を見つめ直すことを教えてくれるすばらしい啓蒙の書だ。

私は、この本を読みながら、もしも新渡戸氏のような真の国際人が、あと何人か、政府内部に存在したならば、もしかすると、あの日米開戦は回避できたかもしれない。と、本気で思ってしまった。少しも古さを感じさせない名著だ。