暗黒事件 (上) (岩波文庫)
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商品の詳細
- Amazon.co.jp ランキング: #295649 / 本
- 発売日: 1954-08
- 版型: 文庫
- 181 ページ
カスタマーレビュー
驚愕の《ナポレオン帝政秘史》
謎の事件の裏には恐るべき陰謀が!――19世紀初頭、ナポレオン帝政時代を舞台にしたバルザック円熟期の傑作歴史政治小説。反政府側が巻き込まれた「暗黒事件」をミステリータッチで描き、エンディングで明らかになる《帝政秘史》は驚きだ。
主人公は、密かにナポレオン政権打倒を狙う王党派亡命貴族の兄弟らを支援する従妹ロォランスと、昔の恩顧に義理だてする中年男ミシウのふたり。彼らは政府密偵の裏をかき4人の青年貴族とともに雌伏するうち、元老院議員が誘拐される奇怪な事件が発生。ロォランスを除く男たち全員が容疑者として逮捕される……。
前半は迂遠な道のりをたどるバルザック的手法にいささか興味索然。しかし、後半、事件が法廷に持ちこまれると、畳みかける展開に俄然目が離せなくなる。検事、弁護士双方が激論をかわし、有罪か無罪かをめぐり裁判は二転三転。この丁々発止の法廷劇はひとつの山場だ。そして、ロォランスが兄弟たちの釈放を求め、イエナ戦役の前夜、皇帝ナポレオンに面会するクライマックスへ。
結局、ミシウのみを断罪することで政治決着。彼は冤罪を晴らせず哀れな最期をとげるが、それから30余年後、驚愕の史実が暴露される。ナポレオン側近の警務大臣フーシェや外務大臣タレイランら政府要人たち……彼らが不敵な術数をめぐらし、事件はそれに付随し起きたのだ。その策謀、奸計とは? 事件の真相は?
バルザックファンの間ではかなり評価が高い本作。スパイ史とまでいわれた第一帝政時代の息苦しい社会状況をみごと再現しながらショッキングな裏面史に肉薄している点、改めて彼の優れた史眼と筆の冴えに敬服する。こんな面白い作品が常時書店に並んでいないのは残念だ。バルザックの作品、文庫でもっと出すべし!
歴史を操る神との邂逅
例によって執拗な風物描写(庭園や家具は個人の歴史的産物ですので)や、誰が誰かわからぬ陰謀の手順が延々つづきますが、当時の司法制度に興味あるなら読んで損はないでしょう。
ツヴァイクのおかげで「フーシェの小説」と名高いですが、正確に言うとフーシェ、タレイランに両頂点をもつフランス既成勢力の政治的闘争実録モノですね。
フランスが共和政から皇帝を抱くまでの過度期に、未来を見ることが出来ない政治家たちが、懸命に「王政か?共和政か?それともポナパルトの戴冠を阻止するため暗殺するか?」と選択肢を模索する。
その過程で、おしつぶされる人々の物語です。
内容は、検察、警察、裁判(およびフーシェの密偵制度)と盛り沢山で暗黒事件の邦題に恥じぬ精緻さです。
「アンギアン公の処刑にポナバルトを巻き込んだのは彼」と面識あるタレイラン没後(1838)を、新聞連載(1841)で告発した小説でもあります。
終盤、主人公は政治的赦免をもとめてイエナ会戦前日のナポレオンに、ついに邂逅する瞬間の感動は筆舌につくしがたいです。
この無感動な小人物の目配せひとつで全ての混乱と破壊が引き起こされたというのに、会ってみると実に平凡で人間的な事しか言わない。
この10数行の「歴史を操る盲目の神」と「押しつぶされる人々」の邂逅こそが、この小説の真髄と信じます。





