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アガメムノーン (岩波文庫)

アガメムノーン (岩波文庫)
By アイスキュロス, Aeschylus, 久保 正彰

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  • 発売日: 1998-10
  • 版型: 文庫
  • 210 ページ

エディターレビュー

出版社/著者からの内容紹介
トロイアー戦争のギリシア側の総大将アガメムノーンは,苦節10年の末ついにトロイアーの都イーリオンを攻略し,ようやく帰還した.しかしそこで彼を待ち受けていたのは,留守の間に不義を重ねていた王妃クリュタイメーストラーと,父アトレウスの王位継承権争いに始まる,一家の血にまみれ呪われた運命であった.新訳.

内容(「BOOK」データベースより)
戦争は何故起り、何をもたらすのか。ギリシアの総大将アガメムノーンは、ついにトロイアーの都イーリオンを攻略し、帰還した。しかしその朝、彼を待ち受けていたのは、留守の間に不義を重ねていた王妃クリュタイメーストラーと、アトレウス家の王位争奪に端を発する、一族の血にまみれ呪われた運命であった。現存最古の戦争批判文学。新訳。


カスタマーレビュー

『戦争』とは、『運命』とは何か5
B.C.458年に上演されたギリシア悲劇である。10年にも及ぶトロイア戦争に勝利して凱旋帰国したアガメムノーン王を王妃クリュタイメーストラーが謀殺する。いわば大戦争の後に起ったクーデターである。しかし前半では戦争でもがき苦しむ民衆の描写が続き、民衆を代表する「コロスの長」も王の「舵取り」を批判して憚らない。王自身も自分を賛美することはない。戦争がいかに人を疲れさせ、狂わせるかを2500年前の文学は既に描いているのである。

そして『運命』とは何か、という哲学的命題も。カッサンドラーという予言者が重要な役割で登場する。彼女がいかに「真実」を予言しようとも、誰も彼女の予言を理解することが出来ない。彼女は自分が政変に巻き込まれて死ぬことを恐れない。自分が死んだあとで初めて「真実」が歴史的に評価される事を知っているからだ。世の中「本当のこと」を語っていることをそのときは理解しないで、後で「あの人は立派だった」と評価することが多くはないか。(太平洋戦争からバブル崩壊まで)古典を読んで自戒したいものだ。

この作品には古代の作とは思えないほど、大筋とは関係ないキラ星のような名言が続く。古典の魅力の一つである。「人の命を、黄金で商う軍神アレースが、槍を交える戦のさなか、秤を吊るし」とか「人間の性というやつは、人がつまずくと、よけいに蹴倒そうと、はやるものだから」とかである。こういう文学が先にあって、シェイクスピア等の名作が生まれたのだと納得した。

憎しみの連鎖3
「アガメムノーン」は、『オレステース3部作』の第1部。その後に、「コエーポロイ」「エウメニデス」と続く。この3部作を収録した、岩波書店のギリシア悲劇全集第1巻は、すでに品切れ(重版して欲しい)。この文庫版は、その3部作のうちの「アガメムノーン」だけを抜き出したもの。もちろん、これだけでも面白いのだが、3部作映画の1本目しか観せてもらえない感じが・・・。
かつてその3部作を一気に読み、ギリシャ悲劇の面白さを知った。「アガメムノーン」では、トロイア戦争に勝利し凱旋帰国した王アガメムノーンが、妃クリュタイメーストラーとその情夫アイギストスによって殺害されるまでが描かれる。この時、他所に預けられていた息子オレステースが、「コエーポロイ」では父の敵である実母を討ち、「エウメニデス」では逆に復讐の女神たちに追い回される。
そもそも、アガメムノーン殺害よりも何世代も以前から、幾多もの報復の応酬が続いていた。例えば、アガメムノーンの父アトレウスは、その弟テュエステースに(自分の妻を誘惑し、王権を奪おうとしたカドで)怒り、弟の二人の子どもを殺して料理し、素知らぬ顔で弟に食べさせた(こういうのが残酷、古典モノって)。アイギストスは、テュエステースのもう一人の息子であり、彼にとってアガメムノーン殺害は、父や兄たちの復讐なのである(別に、クリュタイメーストラーの単なる不倫相手なのではない)。
そうした憎しみと報復の連鎖が、アガメムノーンの血筋に流れており、結局はオレステースの実母殺害まで行き着く。そして「エウメニデス」では、その憎しみの連鎖がオレステースで断ち切られる経緯が描かれる。
近年、テロだの報復だのというニュースを見るにつけ、このアイスキュロスの物語を思い出す。結局は、いずれの国も、憎しみの連鎖を断ち切れるほど成熟していないということなんだろうけど・・・。

読み易さと格調を両立4
現代的で、読み易い訳文です。
それでいて格調を失っていないところが偉い。

内容は、トロイアー戦争に勝って凱旋したアルゴス王・アガメムノーンを、王妃・クリュタイメーストラーが殺害するという話。
王妃の動機は、娘が戦争遂行のための生け贄にされた復讐です。
そして復讐や戦争を嘆く言葉が、全編にわたって散りばめられています。