侏儒の言葉 (岩波文庫 緑 70-4)
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商品の詳細
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- 発売日: 1968-01
- 版型: 文庫
- 108 ページ
カスタマーレビュー
‘河童’の辞書
「輿論」「社交」「神」「結婚」「小説」「ドストエフスキイ」等々の言葉に対し、長短様々のコメントを加えた箴言集。似たような試みは、これ以前にもフローベールの『紋切型辞典』や、芥川が「ポー以来の短編の名手」と称賛したビアスの『悪魔の辞典』がある(黒沢映画『羅生門』の原作として有名な、芥川の『薮の中』も、ビアスの短編に触発されて書かれた)。
だが芥川の付けるコメントは、フローベールの、対象を突き放した態度で書いてみせる冷徹な定義とは違うし、ビアスの冷笑的な、また時にキリスト教への揶揄や、ジャーナリストとして当時の世相を皮肉った箇所が、今の日本人としてはピンと来なかったりする定義とも違っていて、むしろパスカルやニーチェらの箴言にも似た、人生の知恵、或いは的確な批評といった趣がある。実際、≪自由は山巓の空気に似ている。どちらも弱い者には堪えることはできない≫、というような比喩は、ニーチェが好んで使ったものでもある(因みに芥川の著書『文芸的な、余りに文芸的な』はニーチェの『人間的な、(…)』の捩りだろう)。
また、他に本書の見所の一つは、著者が‘文壇’に対して噛みついてみせる箇所で、芥川の肉声で冗談を聞かされるような面白味があり、思わず微笑が浮かぶ。だが、人生についての一見するとユーモラスな言葉の中には、著者の感情の軋みを感じ取ることもできるだろう。
≪人生は一箱のマッチに似ている。重大に扱うのはばかばかしい。重大に扱わなければ危険である≫。


