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パヴェーゼ文学集成〈6〉詩文集 詩と神話

パヴェーゼ文学集成〈6〉詩文集 詩と神話
By チェーザレ パヴェーゼ

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  • Amazon.co.jp ランキング: #362019 / 本
  • 発売日: 2009-09
  • 版型: 単行本
  • 525 ページ

エディターレビュー

内容(「BOOK」データベースより)
詩人としての労働の初穂『働き疲れて』。存在の深奥の言葉『異神との対話』。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
河島 英昭
1933年東京に生まれる。東京外国語大学イタリア語学科卒業。東京外国語大学名誉教授。イタリアの文学経験を日本に根付かせるべく、数多くの作品を翻訳し、批評活動を行なってきた(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)


カスタマーレビュー

異神との対話5


Dialoghi con Leuco`

  《パヴェーゼのレウコ》、ビアンカ・ガルーフィも亡くなった(2006年5月26日朝)。ガルーフィのことはひとまず措いて、本書『レウコとの対話』が邦訳では『異神との対話』に改題されたことにほっとした。白い女神レウコテアーの手から放れて、この詩的神話論に親しみたいからである。
  事物に触れて、湧き出て犇き渦巻く想念に、対話という出口を与える。すると、逆巻く思念の渦がはっきりとした輪郭を帯びてきて、詩想が形作られてゆく。野性が人性を相手に、人性が神性を相手に、神性が野性を相手に、……組み合わせは3×3の9通りかあるが、事物に触発されて対話をくり広げてゆく。すると、次第に異界と人界の相貌が露わになってくる。パヴェーゼはこの対話篇にその詩的神話論の畢生の大伽藍を築き上げたのだった。全27篇のこの神話論は、そのそれぞれの対話のなかで、これまでの神話上の通念を悉く覆して、微塵に打ち砕く。
  作中にある言葉は別として、いまふと思うのだが、戦中のある時点でパヴェーゼは自らの死を思い定めたのではなかったろうか?《いまぼくは死んだ。以後の生は作品の完成のためのみにある。神話詩の環の閉じられたとき、ぼくはひとつの仕草をするだろう、すなわちそれはぼくの死後の死にほかならない、作品が永遠に生きるために》、と。だからこその逃避行であり、〈生きるという仕事〉であったのではなかろうか?
  怪物〈退治〉、蝦夷〈征伐〉、インディアン〈討伐〉、〈…〉内は、神々のたくらみに唆されて、圧殺者に成り下がった人間たちの好んで口にする言葉だ。こうして英雄譚は次々に生まれ、神話に組み込まれてゆく。

オルペウス じつは、こうだったのさ。わたしたちは暗い森の小径を登っていた。すでに地獄のコキュートスの川も、ステュクスの流れも、渡し舟も、あの嘆きの声も、遠ざかっていた。梢には仄かに空も見え隠れしていた。背後には彼女の足取りと衣ずれの音が聞こえていた。けれども、わたしはまだあの下にいたのだ、そしてあの冷たさが背中にこびりついていた。いつの日か、自分もここに戻ってこなければならないだろう、いままでにあったことはまたあるだろう、と思っていた。彼女との暮らしを、以前はそれがどうであったかを、思い出していた。それにもまた、終わりが来るだろう。あの冷たさを、自分が踏みこえてきたあの虚しさを、思い返していた。それは彼女が骨のなかに、髄のなかに、血のなかに、持っていたものだ。もう一度それを生きてみる値があるのだろうか? そこまで思った、そして夜明けの光を垣間見た。そのときだった、自分が言ったのは、《終わってしまえ》 そして振りかえった。エウリュディケーは姿を消した、まるで蝋燭の火が消えるように。わずかに一声、軋む音を聞いた、まるで鼠が逃げ去ったときのように。
バッケー [......]

  ホメーロス以前最大の詩人のあの歌声をいまも耳に聞く者には、冥府までも降って最愛の妻を取り戻した、このオルペウスの言葉は痛撃であるだろう。おまけに、オルペウスをイザナギに、エウリュディケーをイザナミに置き換えて、読み解くことさえ、この神話論は可能にしているのだから。

(『パヴェーゼ・ノート』http://pavesenote.blogspot.com/ )