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「心のノート」を考える (岩波ブックレット (No.595))

「心のノート」を考える (岩波ブックレット (No.595))
By 三宅 晶子

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  • 発売日: 2003-05-16
  • 版型: 単行本
  • 64 ページ

エディターレビュー

出版社/著者からの内容紹介
2002年4月,全国の小・中学校に文部科学省より配布された「心のノート」.少年犯罪やいじめなどが社会問題化する中で「心の教育」を推進するための補助教材という位置づけであるが,今後9年間継続するこのプログラムは子どもの心にどう影響するのか? 近年の教育改革の動向を見据えながら,その内容を検証する.


カスタマーレビュー

心のノートを切り込む傑作5
 著者は心のノートの導入の経緯からその内容までを一様に紹介し、問題摘発に努めています。心のノート、それはどこかうさんくささや気持ち悪さを感じる方は多いと思います。そんなうさんくささはどこから来るのかを分析してくれているいい本です。教育というものには、常に国家が介入するものです。近年の愛国心教育とガイドライン関連法案などを1つにつなげれば、現在の国家の方針として、戦争の出来る国にしようという意図がうかがえます。この心のノートは著者も紹介しているように河合速雄と提携している点から、無意識に何らかのメッセージを訴えかけるような形のものと思えてなりません。河合速雄は臨床心理学会では日本にユング派心理学を取り入れた最初の人物ですが、このようなことをしている点には軽蔑を抱きます。もっともその背景にはなるのに超難関でありながらなってから生活をするのがしんどい臨床心理士の雇用を増やすために国と手を組む、即ち闇取引のようなものを行なうという苦肉の策であるとも考えられますが。少なくとも、心という曖昧なものに国家が介入することは危険なことに間違いありません。著者は様々な点を指摘されていますが、相手もプロなので指摘でききれていない点も多く存在するように思います。著者の指摘全てが正しいとは限りませんが、教育と行政の関わりについてその危険性を指摘する声の1つとして大変重要な本だと思います。

「心のノート」バッシングと性教育バッシング3
 評者は「心のノート」導入に関しては全否定も全肯定もしない立場だが、そこから見て、「心のノート」に対する左派論者たちからのバッシングは、明らかにファナティックとしか言いようがないものがありました。本書に限ったものではないものの、あの程度の内容に対して「修身教育の復権」「国民精神改造運動」「マインド・コントロール」といったどぎつい言葉を並べて批判が繰り広げられたのは、「はじめに否定ありき」という出発点があったからとしか思えません。
 実は似たような光景に見覚えがあります。立場は逆ながら、保守系論者からの性教育、ジェンダー教育バッシング。両者の間にはある種の類似性とパラレルが見いだされ、それぞれの言説をつき合わせて検討してみるのが有効な企てになりそうです。

『「心のノート」を考える』ための資料3
内容は題名の通りです。2002年春に全国の義務教育段階の子どもに「プレゼント」された、道徳の教科書『心のノート』を読み説いています。

『心のノート』の内容、配布までの過程を手っ取り早く知るには、いい本です。

ただ、著者の論は少し強引過ぎる感が否めないように思います。著者は、『心のノート』は国家の個人の心への介入だ、それはけしからん、と主張します。確かに、そういった面はあるでしょう。しかし、『心のノート』を逐一読み解く際の著者の視点も、子どもを一面的に見ているのではないでしょうか。子どもは「善」である、という固定像から著者は論を組み立てています。
そして、「善としての子ども」という概念から出発している点では、「善」性を国家主義とその煽動へ利用するの!か、世界市民の育成に利用するのか、その目的・目標は違いこそすれ、国家行政の側と著者の側は共通しています。これって、同じ穴のムジナ?

とりあえず、資料としては役に立つはずです。

著者の視点からかなりの距離を取りつつ読むことを、私はお薦めします。